オライオン マクストフカセグレン レポート

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Sky & Telescope テストレポート抜粋編

シーイングが比較的よかったので、OMC-140を受け取るとすぐに木星と土星を入れてみた。コントラストの繊細な惑星面の詳細を見事に捕らえた。恒星像は、鮮明なエアリーディスクと第一ディフラクションリングがはっきりと見える。OMC-140の光学性能の高さには感動を覚えたが、それには綿密に設計されたバッフルも大きく貢献する。主鏡から到達する光束に合わせたバッフルの先端はテーパーが施されているだけでなく、うねらせた内壁が真っ黒に塗装されている。視野を少し外して満月を入れてみたが、迷光の量は市場にあるどのマクストフよりも少なかった。
コリメーションは主鏡裏面のプラスチックの蓋を三つ外し六角レンチを回して調節する。シュミカセ同様、1 1/4”のアイピースホルダーが付属しているので、一般的な接眼アクセサリーが使用できる。さらに、取り外しが簡単なダブテール式の6x30ファインダーも付属しているが、その光学性能も悪くない。マクストフウォッチャーには要注目の製品!...by Gary Seronik


Astronomy Now テストレポート抜粋編


マクストフカセグレンの歴史
1941年、Dmitri MaksutovとAlbert Buwersはシュミットカセグレンの比較的フラットな補正板を曲率の大きなメニスカスに改造。これにより、補正板の裏に付けた副鏡に反射した像が主鏡の後ろで焦点を結ぶことが可能になる。1957年、パーキンエルマー社に勤めていたJohn Gregoryがこの副鏡を、メニスカスレンズ自体に蒸着するシルバースポットに変え、一般市場にカタディオプトリック系(反射屈折光学系)が登場することになった。

この設計は多くの点でカセグレン系に類似しているため、一般的には(グレゴリー)マクストフカセグレンと言う。この種のカタディオプトリック系の量産モデルは、コストを抑えるためにすべての光学面が球面に仕上げられている。しかしながら、とくに視野周辺の眼視解像度を上げるには、主副いずれかの鏡面を非球面にする必要がある(John Gregoryによるもうひとつの発明)。オライオン・オプティックス社のOMC-140はこのコンセプトを採用。直径152mmの主鏡が高精度の非球面に仕上げられ、約30mmの主焦点視野でディフラクションリミテッドを実現する。

OMC-140は栗色のアルミ鏡筒に包まれた非常にコンパクトなシステム。長さ410mmの1 1/4”アイピースホルダーと6x30のファインダーが別に付属する。とにかく、従来の形式では2メートルを超える全長になる鏡筒をここまでコンパクトにしてるのだ!私はダイアゴナルを使用しないので、本誌のレビューも直視での印象をお伝えする。

第一印象
最初のテストは最も近い恒星「太陽」だった。私はThousand Oaksのソーラーフィルターに慣れていたが、オライオンからはネジ込んで固定できるフィルタが提供された(オプション)。26mmのプローセルで77倍。太陽の全景を楽に捕らえる。大きな黒点と白斑領域の詳細がいくつか姿を現す。最初にはっきりと確認できたのは粒状斑だ。普段、太陽観測には口径128mm F14の屈折望遠鏡を使っているが、こんなにはっきりと粒状斑を見たことがない。まるでライスプディングのようだ。粒状斑のひとつひとつが巣状に接しているところや、次々に生まれてくる黒点の暗い細孔の前駆体まで確認できる。夜が楽しみだ。

日が暮れて上弦の月が現れる。残念ながら雲がまばらにあるため、その間隙を縫ってテストする。月はマクストフカセグレンのバッフルをテストする格好のターゲットだ。メニスカスの裏で二度目の反射を経た光束は、バッフルへ正確に収束しなければならない。この収束が不完全な場合、像を結ぶ光があふれてしまいコントラストを低下させる。月の明暗界線やクレーターを凝視しても、バッフルの空間は真っ暗なまま。明暗界線の暗い部分に潜む山頂にあるノコギリ状の突起部を見ても、迷光の広がりはまったっくない。フォトジェニックなテオフィルス、キリルス、カタリナなどはその姿をはっきりと浮き彫りにされ、倍率を200倍に上げても変わることはない。
倍率をさらに333倍まで上げ、矛先を南方の起伏の激しい山岳地帯にある120kmのクレーター「マウロリクス」に向ける。高倍率の広角アイピースで覗いた際、南半球で最大級のクレーターはきわめて印象的である。日を変えて同じ333倍で、今度はアリスタルコスの傾斜面を縦に走る神秘的な模様を楽しんだ。ふだんははっきりとしない淡い模様も、このときは明確に捕らえることができた。隆起した明暗界線は鮮明に浮き彫りにされている。次に、私の目はペタビウスに向けられた。このクレーターには柱状の岩が寄せ集まり、まるで倒壊した城のようだ。OMC-140では、こうした複雑な詳細を難なく見分けることができた。

分解能
OMC-140の分解能を広範にわたってテストするために、二重星を覗いてみよう。厳密な意味でカタディオプトリック系の弱点と言われる対象だ。たとえばニュートニアン系と比べると、一般的により大きな中央遮蔽を持つカタディオプトリック系はエアリーディスクから第一ディフラクションリングに光を押しやる傾向にあり、望遠鏡の理論上のしきい値を下げることになる。奇妙な話だが、実際は近接する連星の分解能は上がることになる(明るさが比較的同等の連星の話ではるが)。ともあれ、一般的なカタディオプトリック系の遮蔽率が40%のところ、34%に抑えているOMC-140には十分な期待が持てる。

論より証拠。最初のターゲットはこと座のダブルダブル。大きく広がった(約3.5分)2つの星自体、それぞれが2.6秒と2.3秒隔たりのある二重星である。OMC-140は200倍で、それぞれの二重星を余裕で分離した。二重星の間隔があと半分くらいでも十分いける。より厳しいターゲットを挙げれば、白鳥座にある明るさの違う二重星(2.9等と6.3等)だ。分離するにはより高倍率を要したが、あわく分離することができた。
惑星の場合、コントラストを識別できない範囲なら分解能は問題にならない。問題があるとすれば、比較的大きな副鏡に他ならない。今度は東の空高く輝く土星をターゲットにする。土星の環の淡い影は、望遠鏡のコントラストを測るうえで最高の素材。期待通り、クリーミーイエローの赤道ゾーンから離れたところで、茶褐色の極域の詳細を見分けることができる。すばらしいループを描くカッシーニの空隙から、淡いクレープリングまで、見事な土星の環の詳細である。西側から土星の影が、環の端まで極めてシャープに投げかけられている。衛星は5つまでカウントできる。333倍まで詳細を損なうことなく上げることのできるコンディションの良い夜だった。すばらしい光学系だ。とりわけ、コンピューターで最適化された設計のバッフルの働きはすばらしい。

次の日の深夜、より明るく輝く木星の番だ。土星とは違い、小口径では淡い表面に微妙な詳細を探すことはできない対象である。中央にには太いベルトが鎮座し、バーコードのような横線が何本も走っている。ガリレオ衛星も一緒に捕らえようと、14mmの広角アイピースを使用。その詳細を観るだけで、宇宙船で木星に近づいているかのような感覚を味わえた。

星雲・星団のように淡く広がった対象にも高い性能を発揮する。視野をはみ出してしまう対象ではありますが、40mmの広角アイピースで覗くアンドロメダ座のM31はダイナミックですばらしい。しばし筒先を西へ振ると、こと座のリング星雲が飛び込んでくる。その明るさは十分だ。
OMC-140に40mm(50倍)を装着すると、視野いっぱいにスバルを捕らえる。しばらく楽しんでいると、視野周辺の像が中心の像と変わらないことに気づく。OMC-140が他のカタディオプトリック系に勝るところである。散開星団スバルを眺めていると、ペルセウス座の二重星団があまり遠くないことを思い出す。生き生きとした天の川をゆっくりと流し、二重星団を視野に入れる。40mmの視野では二重星団を一度に覗くことはできないが、視野いっぱいに輝く星には感動を覚える。ここでも、視野周辺で光のむらやにじみを認めることはできない。
フォーカシング

ほとんどの場合、カタディオプトリック系の合焦は、接眼側のツマミを回し主鏡を軸上に移動することで行われる。量産のマクストフやシュミットカセグレンにはよく見受けられるが、この合焦機構で焦点面がシフトしたり、合焦の遊びが生じてしまう。OMC-140にはその遊びがなく、ツマミはフェザータッチで軽い。

光学系が外気温なじむまで、20分から30分かかる。待つかいはあると思うが、オプションのクーリングファン(12V 1A)を接眼部に装着し、吸引または吸入(吸入の方が良い)することで、補正板に外気を当て温度順応に掛かる時間を半減できる。できれば接眼部ではなく、バックフランジのどこかに専用のポートを開けてもらいたい。観測中に使用するメリットがあるとも聞いているからだ。

OMC-140はコンパクトながら造りはしっかりとした英国製。140mmという口径をフルに生かした高性能望遠鏡である...by Steve Ringwood