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テレビュー・ジャパン取扱い製品の雑誌レポートをご紹介するコーナーです。
米Sky&Telescope誌をはじめ、より具体的な観望インプレッションなど、読み物的要素も加味してあります。
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巻頭言にかえて…

「編集部に寄せられた一通の手紙」

米国天文雑誌「Amateur Telescope Making Journal」より


私にとってパーフェクトな望遠鏡は、
小型のアポクロマート屈折望遠鏡でした…


まだ若いころ故郷の街で一番大きな望遠鏡を造ったことがあります。そのころ8インチ(20センチ)といえばとてつもない大口径で、私の仲間で見た人はいませんでした。40歳になるまで、4インチ(10センチ)から12.5インチ(32センチ)まで、友達や子供達のためにいろいろな口径の望遠鏡を製作してきました。当時、12.5インチは大望遠鏡の部類で、そうした望遠鏡を所有することがひとつの栄誉でした。

私は今年の6月で73歳になります。これまで天体観測に費やしたのと同じくらいの時間を、望遠鏡の組み立てやコンサルティングなどに使ってきました。望遠鏡造りから離れはや数十年、今ではガラスの研磨やテストに長い時間をかける気力がすっかりなくなりました。ただ、天候が許すかぎり天体観測を楽しみたい気持ちは残っています。

いま、身の回りの所有パーツを見渡すと、10インチ(25センチ)の鏡筒、ミラー、そして12.5インチ鏡筒用の接眼部がありました。ただし、細部のパーツはありません。私がまた望遠鏡の組み立てに意欲を駆られたことをお察しください。ただ、厄介なことに、いずれのパーツも思ったより重量があります。それぞれ、性能の高いパーツばかりですが、時間、費用、労力のことを考えると、今の自分にはできそうもありません。
天文雑誌に掲載されたアポクロマート屈折望遠鏡の広告に注目し始めたのもそのころです。「アポクロマート」という用語は何度も耳にしてきましたがその内容についてはほとんど無知で、どうせメーカー側の売り込み手口だろうくらいにしか考えてなかったのです。そこへ友人に中古の「テレビュー・ジェネシス *」を紹介され、その日の夕方に店頭まで足を運びきました。店にはジェネシスを搭載する三脚がなく性能をチェックできませんでしたが、友人の熱心な薦めで購入を決め家に持ち帰りました。
暇を見つけ自宅の作業場に行き、ジェネシスを手持ちの三脚に搭載するための加工を済ませ、観測のタイミングを待ちました。クリアーな空に恵まれた夜ジェネシス持ち出したとき、屋内でのサイズがまったく想像できないくらいにコンパクトに見えるのは驚きです。20年間以上も使い続けてきた10インチ(25センチ)で観たどの空よりもクリアーに見える。都市近郊に住んでいたため、何年も真剣に観測していなかったからでしょうか。

結局、多くの点でこの小さな望遠鏡に満足しています。少年のころの小型屈折望遠鏡に比べてもジェネシスは携帯性、超広視界、コントラストの点で遥かに優れています。メガネを掛けたままでも簡単に使いこなせ、組立と撤収がまたたく間にできる望遠鏡です。

この望遠鏡を生涯所有していこうと決めた決定的な理由があります。私には44年間連れ添った大切な妻がいます。妻はいつも大口径望遠鏡の巨大な図体に嫌気をさし、私といっしょに観望に出かけることはありませんでした。ジェネシスを手に入れた今、セットアップすればいつも一緒に観望を楽しみ、話もはずんで時間がたつのを忘れてしまいます。

これはアマチュア好みのテクニカルな内容について書いた手紙ではありませんが、ジェネシスが私にとって最高の望遠鏡であることに間違いはありません。私の経験が天体観測を楽しむ人のお役に立てば幸いです。


* 10cm F5 屈折望遠鏡。4群4枚構成。リアレンズ群中にフローライトを採用した、テレビュー社最初のアポクロマート屈折。


プロントテストレポート "スモールスコープ ビッグスカイ"(抜粋編)
                     ジョン・シブレイ(John Sybrey)


「できるだけ口径の大きな望遠鏡を買いなさい。より淡い対象をより詳細に見ることができるから。」この20年、人にも自分自身にもこう言い聞かせてきた。

「プロント」という小さな屈折望遠鏡が、これまで口径一辺倒だった私を解放してくれた。並みの小口径に何ができるかとも思っていたし、この趣味を突き詰めていけばいくほど大口径に傾倒していくのが当たりまえだとも考えていたからだろう。いずれにしても、この春プロントで数回の観望を経験しただけで、私の中で望遠鏡に関する枠組みが取り払われたことだけは確かだ。


小口径ができること

プロントの光学系は口径70mm、F6.8、焦点距離480mmで、EDガラスが採用されている。手にした瞬間、最高のポータブル・リッチフィールド(広視界)テレスコープだと予感した。

接眼部の合焦機構には観望に適した真鍮のラックアンドピニオンが採用され、繰り出し距離は60mm。つまみを1回転させると25mm可動する。合焦ハンドルの大きさは42mmもあり、ゴムリングが巻かれているため、厚手の手袋をはめた手でも確実に操作することができる。接眼部の動きはこれまで見たどの望遠鏡のものよりもスムーズなうえ、撮影時に使用できる固定ネジも付いている。

鏡筒バンドは黒アルマイト処理が施され、バットハンドル1つで重量バランスを簡単に調整できる。このメカニズムは、プロントを経緯台に搭載するときはもとより、赤道儀で使うときも意外と大切だ。


知らなかった宇宙

まず、プロントと組み合わせて低倍率14x、広視界5°を実現するアイピース「パン・オプティック35mm」を使い、4月のヘール・ボップ彗星のを覗いた。明るいダストテールのほとんどがプロントの広視界に収まり、微妙なイオンテールまで見ることができた。すばらしい。条件のよい夕方には青色の痕跡さえ確認できた。

このような詳細を捕らえることができるのはプロントのコントラストの良さに起因する。驚いたことに、この低倍率で彗星内部のコマ領域を囲むフード構造を捕らえ、ナグラー7mmでは隠れた核から分離する暗い扇形が一目で見えた。口径7センチとしては上出来。

また、パン・オプティック35mmにUHCフィルタを着けて夏の天の川に沿ってプロントを流すと、はくちょう座の北アメリカ星雲に遭遇。それもアイピース視野の半分に余裕で収まっている。プロントを少し南に向けると、一対のベール星雲がある。フィルタなしで夜空に広がる星雲が見えるかどうかを試したが、よく見えた。

一番驚いたのは、やはり天の川で、小口径では決して捕らえることができないと思っていた領域をUHCフィルタを着けて見たときだ。北アメリカ星雲と同じくらいすばらしい星雲の輪の広がりが見えた。

このあたりの天の川を撮影しても、銀河星群の光が星雲の詳細を飛ばしてしまう。ところが、パン・オプティック35mmにUHCフィルタを装置してプロントを覗くと、見えない光の放射がその命を吹き返す。フィルタが空と星の明るさを抑え、星雲の発する光を浮き上がらせるのだ。

プロントを14xという低倍率で見ると、とくに北のカシオペア座からへびつかい座向かって銀河面を漂うHII領域はとても身近に感じられる。

これでプロントの「リッチフィールド テレスコープ」たる由縁がお分かりいただけたと思う。では、倍率の上限はどうだろう。一般的なルールに従えば口径70mmのプロントの最高倍率は168x(20x/口径1センチ)といことになるが、Nagler 7mmを3xバローレンズに差し込み、琴座のイプシロン(有名な二重性)を覗いて見た。2.8"のイプシロン1と2.2"のイプシロン2のディスクは暗い夜空を背景にくっきりと分離した。

今度はうしかい座のイプシロンでテストした。この2.9"の二重性の分離が難しいのは、主星が2.5等星のため、5等星の伴星の光をかき消してしまうからだ。プロントの優秀な光学系とコーティングのよさが140xでの分離を実現したことになる。


肩に背負える宇宙船

おそらく、簡単なセットアップと高い携帯性がプロントを選ぶ主たる理由になるだろう。口径が大きいほどより淡い対象を捕らえることができるのは確かだが、大口径でも質の劣る望遠鏡が高性能な小口径より優れていると言えるだろうか。大口径なら810mmまで何百回となく運用し、星雲星団を探索して期待どおりの見え方を楽しんできた。それでも、造りの良い70mmの屈折望遠鏡「プロント」なら、コンパクトなショルダーバッグの中にアイピースと一緒に収まり、速やかにセットアップできるうえ、まだ経験したことのないマクロの世界を楽しませてくれる。


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レンジャーレポート "Better View Desired誌"から(抜粋)


レンジャーの解像度を、口径78mmのEDを使ったとスポッティングスコープと比べてみた。25倍で比較すると、スポッティングスコープの限界解像度の識別距離は16.8メートルだが、レンジャーの場合は18メートルあった。

レンジャーの解像度が従来の上位スポッティングスコープをはるかに越えていることは疑いの余地がない。しかも、対象との距離が遠くなり倍率を上げていくほどに、その差はますます明らかになる。

(レンジャーは同誌で "BestBuy" に選ばれました。)


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ヘリオス・ワン レポート
太陽観測誌「Coelum Astronomia by Giovanni Dal Lago」より


Helios 1は、Hα太陽観測専用に設計された、焦点距離400mm、半値幅0.8Åの屈折望遠鏡である。
半値幅とは、望遠鏡を介して太陽のどのような詳細が見えるのかを示す重要な数値である。一般的に、半値幅が1から2Åの場合、太陽のプロミネンスは観測できるが、太陽面の詳細を観測することはできない。半値幅を0.8から0.5Åにすると、彩層面の詳細を観測することが可能になる。半値幅の値が小さくなればコントラストは向上するが、プロミネンスは暗くなる。この数値を小さくするにはエタロンおよびコーティングの製造公差がきびしくなるため、製造コストもアップする。
また、この種の太陽フィルタの場合、「太陽光の入射角」と「熱的安定性」が重要な要素となる。太陽光の入射角により半値幅の公称値が変わる。実際の半値幅は常に規定値よりも広がるが、焦点距離を長くし口径を絞れるほど2つの値は近づく。従って、F30で観測するれば十分な光球面を観測でき、F45にすればさらによく見えるが、逆にF値を20にすると問題だ。これが、かつてデイスター社が長い焦点距離を前提としていた理由である。Helios-1の革新的な特徴はF値に関係なく太陽を観測できることにある。実際、Helios 1のF値は5.7。エタロンを鏡筒の中に置き、それを2枚の補正レンズではさむ独自の光学系により、エタロンに対する太陽光の入射角を、あたかも対物の前にエタロンを置いたときと同じように調整される。これにより、エタロンの直径をHelios 1の口径の約半分にすることができる。このエタロン構成はNASAの設計にも採用されている。
Helios 1の2つ目の特徴はブロッキングフィルタにある。温度による変動はあるが、透過波長のアライメントを可能にする。ブロッキングフィルタは接眼部の前に位置し、リングを回転させることで傾く。
さらに、ERF(Energy Rejection Filter)が対物の前に装着され、紫外線や赤外線をカットし、最終的な像の明るさを調整する。
この太陽望遠鏡のメカニズム精度はすばらしく高い。ヘイコイド接眼部は超滑らかつ高精度で、これまで見てきたどの製品の基準をはるかに超えている。ダイアゴナルとアイピースの使用を可能にする2"および1 1/4"のチューブを外したとき、スポンという空気音がするほど各部位は精巧に切削加工されている。


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OMC-140 レポート


Sky & Telescope 2002年3月号テストレポート(抜粋編)

シーイングが比較的よかったので、OMC-140を受け取るとすぐに木星と土星を入れてみた。コントラストの繊細な惑星面の詳細を見事に捕らえた。恒星像は、鮮明なエアリーディスクと第一ディフラクションリングがはっきりと見える。OMC-140の光学性能の高さには感動を覚えたが、それには綿密に設計されたバッフルも大きく貢献する。主鏡から到達する光束に合わせたバッフルの先端はテーパーが施されているだけでなく、うねらせた表面が真っ黒に塗装されている。視野を少し外して満月を入れてみたが、迷光の量は市場にあるどのマクストフよりも少なかった。
コリメーションは主鏡裏面のプラスチックの蓋を三つ外し六角レンチを回して調節する。シュミカセ同様、1 1/4”のアイピースホルダーが付属しているので、一般的な接眼アクセサリーが使用できる。さらに、取り外しが簡単なダブテール式の6x30ファインダーも付属しているが、その光学性能も悪くない。
マクストフウォッチャーには注目の新製品だ

…by Gary Seronik


Astronomy Now (英国天文誌)2002年3月号 テストレポート(抜粋編)

マクストフカセグレンの歴史
1941年、Dmitri MaksutovとAlbert Buwersはシュミットカセグレンの比較的フラットな補正板を曲率の大きなメニスカスに改造。これにより、補正板の裏に付けた副鏡に反射した像が主鏡の後ろで焦点を結ぶことが可能になる。1957年、パーキンエルマー社に勤めていたJohn Gregoryがこの副鏡を、メニスカスレンズ自体に蒸着するシルバースポットに変え、一般市場にカタディオプトリック系(反射屈折光学系)が登場することになった。
この設計は多くの点でカセグレン系に類似しているため、一般的には(グレゴリー)マクストフカセグレンと言う。この種のカタディオプトリック系の量産モデルは、コストを抑えるためにすべての光学面が球面に仕上げられている。しかしながら、とくに視野周辺の眼視解像度を上げるには、主副いずれかの鏡面を非球面にする必要がある(John Gregoryによるもうひとつの発明)。オライオン・オプティックス社のOMC-140はこのコンセプトを採用。直径152mmの主鏡が高精度の非球面に仕上げられ、約30mmの主焦点視野でディフラクションリミテッドを実現する。
OMC-140は栗色のアルミ鏡筒に包まれた非常にコンパクトなシステム。長さ410mmの1 1/4”アイピースホルダーと6x30のファインダーが別に付属する。とにかく、従来の形式では2メートルを超える全長になる鏡筒をここまでコンパクトにしてるのだ!私はダイアゴナルを使用しないので、本誌のレビューも直視での印象をお伝えする。

第一印象

最初のテストは最も近い恒星「太陽」だった。私はThousand Oaksのソーラーフィルターに慣れていたが、オライオンからは補正板セルにネジ込んで固定できるフィルタが提供されている(オプション)。26mmのプローセルで77倍。太陽の全景を楽に捕らえる。大きな黒点と白斑領域の詳細がいくつか姿を現す。最初にはっきりと確認できたのは粒状斑だ。普段、太陽観測には口径128mm F14の屈折望遠鏡を使っているが、こんなにはっきりと粒状斑を見たことがない。まるでライスプディングのようだ。粒状斑のひとつひとつが巣状に接しているところや、次々に生まれてくる黒点の暗い細孔の前駆体まで確認できる。夜が楽しみだ。
日が暮れて上弦の月が現れる。残念ながら雲がまばらにあるため、その間隙を縫ってテストする。月はマクストフカセグレンのバッフルをテストする格好のターゲットだ。メニスカス補正板の裏で二度目の反射を経た光束は、バッフルへ正確に収束しなければならない。この収束が不完全な場合、像を結ぶ光があふれてしまいコントラストを低下させる。月の明暗界線やクレーターを凝視しても、バッフルの空間は真っ暗なまま。明暗界線の暗い部分に潜む山頂にあるノコギリ状の突起部を見ても、迷光の広がりはまったっくない。フォトジェニックなテオフィルス、キリルス、カタリナなどはその姿をはっきりと浮き彫りにされ、倍率を200倍に上げても変わることはない。
倍率をさらに333倍まで上げ、矛先を南方の起伏の激しい山岳地帯にある120kmのクレーター「マウロリクス」に向ける。高倍率の広角アイピースで覗いた際、南半球で最大級のクレーターはきわめて印象的である。日を変えて同じ333倍で、今度はアリスタルコスの傾斜面を縦に走る神秘的な模様を楽しんだ。ふだんははっきりとしない淡い模様も、このときは明確に捕らえることができた。隆起した明暗界線は鮮明に浮き彫りにされている。次に、私の目はペタビウスに向けられた。このクレーターには柱状の岩が寄せ集まり、まるで倒壊した城のようだ。OMC-140では、こうした複雑な詳細を難なく見分けることができた。

分解能

OMC-140の分解能を広範にわたってテストするために、二重星を覗いてみよう。厳密な意味でカタディオプトリック系の弱点と言われる対象だ。たとえばニュートニアン系と比べると、一般的により大きな中央遮蔽を持つカタディオプトリック系はエアリーディスクから第一ディフラクションリングに光を押しやる傾向にあり、望遠鏡の理論上のしきい値を下げることになる。奇妙な話だが、実際は近接する連星の分解能は上がる*ことになる(明るさが比較的同等の連星の話ではるが)。ともあれ、一般的なカタディオプトリック系の遮蔽率が40%のところ、34%に抑えているOMC-140には十分な期待が持てる。
論より証拠。最初のターゲットはこと座のダブルダブル。大きく広がった(約3.5分)2つの星自体、それぞれが2.6秒と2.3秒隔たりのある二重星である。OMC-140は200倍で、それぞれの二重星を余裕で分離した。二重星の間隔があと半分くらいでも十分いける。より厳しいターゲットを挙げれば、白鳥座にある明るさの違う二重星(2.9等と6.3等)だ。分離するにはより高倍率を要したが、あわく分離することができた。
惑星の場合、コントラストを識別できない範囲なら分解能は問題にならない。問題があるとすれば、比較的大きな副鏡に他ならない。今度は東の空高く輝く土星をターゲットにする。土星の環の淡い影は、望遠鏡のコントラストを測るうえで最高の素材。期待通り、クリーミーイエローの赤道ゾーンから離れたところで、茶褐色の極域の詳細を見分けることができる。すばらしいループを描くカッシーニの空隙から、淡いクレープリングまで、見事な土星の環の詳細である。西側から土星の影が、環の端まで極めてシャープに投げかけられている。衛星は5つまでカウントできる。333倍まで詳細を損なうことなく上げることのできるコンディションの良い夜だった。すばらしい光学系だ。とりわけ、コンピューターで最適化された設計のバッフルの働きはすばらしい。
次の日の深夜、より明るく輝く木星の番だ。土星とは違い、小口径では淡い表面に微妙な詳細を探すことはできない対象である。中央にには太いベルトが鎮座し、バーコードのような横線が何本も走っている。ガリレオ衛星も一緒に捕らえようと、14mmの広角アイピースを使用。その詳細を観るだけで、宇宙船で木星に近づいているかのような感覚を味わえた。
星雲・星団のように淡く広がった対象にも高い性能を発揮する。視野をはみ出してしまう対象ではありますが、40mmの広角アイピースで覗くアンドロメダ座のM31はダイナミックですばらしい。しばし筒先を西へ振ると、こと座のリング星雲が飛び込んでくる。その明るさは十分だ。
OMC-140に40mm(50倍)を装着すると、視野いっぱいにスバルを捕らえる。しばらく楽しんでいると、視野周辺の像が中心の像と変わらないことに気づく。OMC-140が他のカタディオプトリック系に勝るところである。散開星団スバルを眺めていると、ペルセウス座の二重星団があまり遠くないことを思い出す。生き生きとした天の川をゆっくりと流し、二重星団を視野に入れる。40mmの視野では二重星団を一度に覗くことはできないが、視野いっぱいに輝く星には感動を覚える。ここでも、視野周辺で光のむらやにじみを認めることはできない。

フォーカシング

ほとんどの場合、カタディオプトリック系の合焦は、接眼側のツマミを回し主鏡を軸上に移動することで行われる。量産のマクストフやシュミットカセグレンにはよく見受けられるが、この合焦機構で焦点面がシフトしたり、合焦の遊びが生じてしまう。OMC-140にはその遊びがなく、ツマミはフェザータッチで軽く、少し敏感すぎるかもしれない。
光学系が外気温なじむまで、20分から30分かかる。待つかいはあると思うが、オプションのクーリングファン(12V 1A)を接眼部に装着し、吸引または吸入(吸入の方が良い)することで、補正板に外気を当て温度順応に掛かる時間を半減できる。できれば接眼部ではなく、バックフランジのどこかに専用のポートを開けてもらいたい。観測中に使用するメリットがあるとも聞いているからだ。
OMC-140はコンパクトだが、造りもしっかりとした英国製。140mmという口径をフルに生かした高性能望遠鏡である

…by Steve Ringwood


* テレビュー・ジャパン注:エアリーディスクの光が第一明環以下に多く回るためディスクの光量ピークが低くなります。同時に、ピークエリアも狭まりますので、極めて近接した等光二重星の分離はむしろ有利になります。


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14.5インチ スタースプリッターテストレポート 
アストロノミー誌、94年2月号より


"大口径望遠鏡の明るい観望を望むユーザーに
スタースプリッターが提供する新型高品質ドブソニアン"

- アラン・ダイヤー(Aran Dyaer)


1970年以来、ドブソニアン反射望遠鏡は、バックヤード アストノロマーにとって最も人気の高い観望スタイルになっている。ジョン・ドブソンが広めた簡素にしてエレガントなデザインは、口径障壁の打破と、かつてない集光力の実現を可能にした。
このドブソニアン市場に参入した新参の一角がカリフォルニア州のジム・ブランケラが製作するスタースプリッター シリーズである。
同シリーズの口径は、デーブ・クリージやその他の望遠鏡メーカーが採用してきた従来のドブソニアンの設計をモディファイした12.5から36インチ。副鏡および接眼部を軽量のトップリングに組み込んだクレバーな設計。主鏡は半円のベアリングに支えられたボックスに収まる。ベアリングの直径が大きく重心が低いため、ミラー ボックス アッセンブリは低くコンパクト。そのうえ、アルミのトラスチューブを使って上下ユニットを接続し携行性を向上させている。その結果、手で扱えるサイズのコンポーネントに分解できる一方、それを組み立てればユーザーを銀河のかなたに導く望遠鏡が完成する。 

ブランケラはファースト クラス ドブソニアンを実現した。
今回のテストでは、14.5インチ スタースプリッターがすばらしい光学系と見事に仕上げられたマウントから成るドブソニアンであることがわかった。


セットアップ

トラスチューブ式のドブソニアンを知らない人は複雑でブレのある本体を想像するかもしれないが、実際はそうではない。使用するたびに、わずか5から10分で頑丈で使いやすいドブソニアンを組み立てることができる。

トラスチューブを挿入し上端をクランプ締めする前に、下ユニットを所定の位置に固定する。ロッカーボックス(上下軸ベアリングが載る部分)の重量は14キロ、ミラー ボックス(上下軸ベアリングが付いている部分)の重量は22.7キロ。14.5インチF5のミラーはあと9.9キロの重さが追加される。
ミラーは簡単に取り外して、別に搬送できる。

いずれのコンポーネントも大きいが、車からの出し入れが一人でできる重量だ。本体を移動するために、標準で長さ153センチ、直径25センチのゴムタイヤ付きの木製ハンドル用意されている。これをロッカーボックスの両側に取付け、二輪車式で観測フィールドを移動する。オプションだが、車両用スライド プレートもある。実用的でとても便利だ。

上下の木製クランプがトラス チューブをしっかりと固定する。組み立てには工具を使う必要がなく、ナットやボルトがゆるんだりして発生するトラブルがない。開梱時にはコリメーションが必要だが、再現性に極めて優れているためその後観測ごとに修正を加える必要はない。

主鏡のコリメーションにはドライバーやレンチは不要。金属製ミラー セルの裏にある3つの大きなハンド ノブにより、必要な傾きの調整ができる。このノブは簡単に調整できるが、使用中動いてしまうことはない。

副鏡は、ケネス・ノバック製ホルダー/スパイダーに固定される。コリメーション ネジもあるが(調整にはドライバーが必要)最初から調整され固定されているため、日々のコリメーションは主鏡のスケアリングのみで行う。

このテストでは、副鏡のホルダを取り付けて調整しなければならなかった。本機がカリフォルニアを出たときは副鏡は固定され調整済みだったが、輸送中にホルダがゆるみスパイダーから落ちていたからだ。

コリメーションの方法を解説する参考書(Tippy D'Auria著)がオプションで入手できる。同書では、3つのコリメーション アイピースの使い方が説明されてるが、私はこの方法を他のドブソニアン ユーザーにも強く推奨したい。


スタースプリッターの使用感


14.5インチのスタースプリッターは使い易い大きさのドブソニアン。
私の場合は鏡筒が45°傾いているときならファインダーやアイピースに踏み台なしで届いたが、鏡筒がそれ以上の角度に向いているときにはステップが一段必要だ。

すばらしい導入装置テルラド ファインダーが標準で付属。接眼部が鏡筒の右側にくるように上部に取り付られている(鏡筒の裏から見て)。テルラドの下端は接眼部の上に位置している。私のような右利きのユーザーにとって、この位置では少し覗きにくい。テルラドの上端を接眼部に合わせ、少し低い位置に取り付ければ使い易い。

テスト機には、高品質なJim's MobileのNGF-3が付いてきた。接眼部のチューブがローラーベアリングに載るクレイフォード式のユニットだ。動きはスムーズかつ正確で、イメージ シフトがない。ドローチューブストロークは4.3 cm。重量のあるアイピースをサポートするだけのテンションがある。唯一、アイピースを止めるネジが小さいため手袋をはめたまま調整しにくかったのは残念だ。

摂氏ゼロ度に近い夜、ミラーを馴染ませるのには1時間掛かった。このクラスのドブソニアンはだいたいこんなところだ。空気の循環を促すため、ミラー セルはオープン フレームワークに取り付けられている。さらに、バッテリー駆動のファンがミラーの裏に取り付けられている。ただし、寒い夜に使えば9ボルトのバッテリーはすぐに消耗してしまう。

トラスチューブ式のドブソニアンはすべて同じだが、チューブにはカバーが必要になる。カバーを付けてないと、周囲の光がチューブに反射しアイピースの視野に飛び込んでくる。冷却に必要なオープン ミラー セルからも、地上に反射した光が入ってくる。チューブ カバーとリア ダスト カバーは、迷光を遮りコントラストを向上させるための必須アイテムだ。

ベアリングには、今では多くのドブソニアンに使われるテフロン パッドを採用。その結果、すばらしくスムーズな動きが実現され、鏡筒の位置を決めるのに十分なトルクを保ちながらも、スムーズな上下運動により対象を楽に中心に導くことができる。強風のフィールドでは対象が外れてしまうが、大型ドブソニアンには避けることのできない特性である。

通常の重量のアイピースならよく重量バランスがとれている。鏡筒を低く向けると、プルーセルの26mmのような軽量アイピースでも少し下に傾きぎみになる。ミラー ボックスの上にねじ込むカウンターウェイトが用意されている。これで、鏡筒を下に向けてもほとんどのアイピースでバランスがとれるようになる。それでも、パンオプティック35mmのような重量のあるアイピースを付けると、重量バランスは少々下になる。
そうしたときには、オプションのカウンターウェイトを追加できる。

ほとんどのドブソニアンがそうであるように、ダンピング性能が非常に高い。最上部を叩いても、その振動は1.5から2秒で収まる。強風の下で数日使用してみたが、惑星の観測は難しくなる。これが穏やかな夜になると、大集光力によるディープスカイ観望にも、高解像力を活かした惑星観望にもその威力を発揮する。


美しい外観

本体には固い合板が使用され、マホガニー、オーク、カンバから選択できる。耐久性を考慮して木製クランプは樫で作られている。木製の部分はすべてポリコートされ、光沢のある仕上がり。外観も覗いたときのすばらしさに引けをとらない。テストを数日間重ねた結果、このサイズのドブソニアンとして驚くべきものがあった。

シーイングが安定した夜、土星の輪の色の違い、輪の内側の薄暗い「ちりめん輪」ががはっきりと識別できた。アンドロメダ銀河の2つのダスト レーンもはっきりと捉え、その伴銀河は小口径で見るアンドロメダ銀河そのもののような大きさと明るさで見えた。ペガサスの明るい銀河NGC7331が15等星のコンパニオン銀河に囲まれ、近くのステファンのクインテット銀河団の様子も楽に捉えた。O-IIIフィルタを付けて見るベール星雲のフィラメントには驚嘆した。

対象が次々とスタースプリッターの高品位光学系と大集光力の餌食になっていく。
このような観望スタイルを望むユーザーには、十分一考の価値あるドブソニアンだ。


テレビュー・ジャパン注:このレポートの当時と現在とでは、スタースプリッター望遠鏡の仕様に一部異なる部分があります。また、弊社では付属品の設定や構造の一部に変更を加え、「日本仕様」として販売しています。そのため、細部の記述は必ずしも正確ではありません。詳細はスタースプリッター望遠鏡のページをご参照ください。ただし、レポートの大筋は客観的な評価になっていますので充分ご参考になるでしょう。


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スタースプリッター観望インプレッション
byスタースプリッターU 37cm F5モデル


●「銀河の森」

おとめ座銀河団の中心部「マカリアンの鎖」を見る。
写真で見るより遥かに銀河一つ一つが大きく、かつ個性的な形をしているのがはっきり判る。小・中口径では“光のしみ”にしか見えない対象も、実体を持って見える。エッジオン、レンズ型、紡錘形、正面銀河、不規則型、いろいろなタイプの銀河の集団だということがよく判る。どこかで見たようなイメージだと思い返す。そう、パロマーのシュミットの画像だ!
銀河の鎖をたどっていくのは簡単。M86から「シャム双生児」まで、一気に5000万光年の宇宙旅行。これが“ギャラクシー ホッピング”の実感だろうか。非常に狭い範囲の探訪にもかかわらず、Mナンバーを持つ明るい銀河はもちろん、マイナーな対象も腕や渦構造、暗黒帯など、詳細が楽しめるものも多い。まさに「銀河の森」は宝の山だ。ほとんど無限遠とさえ思える深宇宙の旅は、大口径ドブソニアンに敵うものはないと実感した。


●「馬頭星雲」

氷点下10°を下回る厳寒の阿武隈山中。冬の天の川がはっきりとコントラストよく見えている。この日のために用意した秘密兵器 Hβフィルター* をパンオプティック35mmに付け、南中を少し過ぎた馬頭にテルラド** の照準を合わせる。さあチャレンジ! ピント合わせももどかしく、アイピースの視野に見えたのは、お化けのような心眼の世界で見えるものではなく、はっきりとした輪郭に縁取られた“まさに馬の首”そのものの大きな姿。“神が創りたもうたもの”としか言いようのない荘厳な姿であった。観望の一ページを刻んだ体験と言うと聞こえはよいが、こうした感覚にどっぷり漬かりたいがため片道300キロも走ってこんな山の中まで来ている! 燐光のように広がった背景の散光星雲に、ぐっと入り込んだ黒ぐろとした馬頭のは今でも強烈に目に焼き付いている。

* 別名「House Head Nebulae Filter」、米国ルミコン社製。
** テルラドファインダー、透過型等倍ファインダー。4°、2°、0.5°の三重円のレチクルを星空に重ねて照準を合わせる。


●「モンキー星雲」

この奇妙な形をした星雲を知ったのは、天体写真に登場するようになってからである。上から見ても下から見ても「猿(と言うより孫悟空)」の横顔に見える。これも“神々の造形の妙”と言ったところだろうか。

厳冬の阿武隈山中、頬を切る痛い風に凍える。その代わり透明度は抜群だ。双子の兄弟が高く天空にかかり、その足元を洗う天の川にそいつは浮かんでいるはずだ。向かって右側の足を辿っていくとη星に行き当たる。テルラドでめぼしをつけ、OIIIフィルター* をねじ込んだパンオプティック35mmを覗く。おお! 意外に明るい。星雲の中心に明るい恒星があり、星雲はやや中央集光して見える。その星を光源とした「ぼんぼり」のような不思議な光り方だ。大きな眼窩も額の数珠も判る。飛び出した口には暗黒体の唇が長く食い込んでいる。写真で見るユーモラスな形そのものなのだが、比較にならない幻想的なイメージに眼視観望の醍醐味を覚える。

* 米国ルミコン社製ネビュラフィルター。


●「ステファンの五つ子」

M.フーコーの81cm鏡でE.ステファンが発見した余りにも有名な小銀河団。この対象がついにわれわれアマチュアの望遠鏡でチャレンジできるとは感無量である。

1996年8月21日、東名高速を御殿場へと走る。松井田からは稲光を伴った大雷雨である。インターを出て、濃い霧の中を富士山須走口5合目へ向かう。最後のつづら坂でやっと霧の層を抜けた。眼下は素晴らしく濃く暗い雲海。下界の明かりは全く見えない。はくちょう座が既に西空へ移っている。北アメリカ星雲が肉眼ではっきり確認できる。

パンオプティック35mmの視野にNGC7331をまず導入する。渦構造が簡単に判る。思わず見惚れてしまう。わずかに視野を振り、導入する。この倍率(57倍)では五つ子はまとまった光のシミに過ぎない。パンオプティック15mmに差し替える。まだ、小さい。ナグラー9mm(210倍)の暗い視野にはっきりと光のシミは群れになって見え始める。じっと目を凝らす。やや2つの大きな光芒に小さな2つの光芒が寄り添って見える。そらし目でなくとも確実に確認できる。4つ見えれば5つ見えたのと同様だが、近接した2つの星雲の核がどうしても分離して見えない。透明度はほぼ最良。シーイングだって悪くない。37cmの限界だろうか? あるいは、自分の目の限界だろうか?

その後、何度かチャレンジを繰り返すが、この時に勝るイメージにはより大口径でも遭遇していない。


● 「火星」

ジェット気流が本州の上空から消えた1997年2月1日、奥武蔵山塊の最高峰「丸山」(といっても標高900mm程度)の直ぐ南に位置する「埼玉県県民の森」に好シーイングを期待して出かける。奥武蔵とはいえさすがに厳寒期である、都幾川村を抜けて林道を登り、白石峠を過ぎてからは所どころ雪道や凍結路になっていた。

4月末の衝を前に、火星はまだ視直径12秒ほどの小さな円盤に過ぎない。それが大口径にかかるとあんなすごいことになるとは…。

県民の森駐車場は東側に森林が迫り視界を約20°程遮っている。37cmを組み立て、鏡面を外気温に馴染ませるためしばし冷却ファンを回す。もちろん、その間は代表的なディープスカイ対象を低倍率で観望する。星像が非常に小さい、期待通り好シーイングが期待できそうだ。
火星が昇ってくるまでの間、しばし車中で仮眠を取る。

光度マイナス1等級を超える火星は非常に明るい。森の梢にまだ引っ掛かっているような低空の火星に37cmを向ける。ナグラー4.8mm 410倍で見る火星は、わずかにシーイングの揺れがあるがまったくボケない。2倍バローレンズを追加する。カッシリとしたコントラストの火星は、実にきれいな色彩である。大シルチスがやや青みを帯びた朝霧の中から見えている。自転に伴い大シルチスがその三角形の巨大な姿を徐々にあらわすさまは、リアルタイム観望の醍醐味そのものである。純白の北極冠と、同じく白い南極雲がヘラス大陸に大きくかぶさっている。雲の色彩の違いもはっきり判る。

もちろん、過去の大観測者達が華麗にスケッチした“運河”は見えはしない。ただ、紅色がかったオレンジ色をした大陸は一様な濃度ではなく、微細で複雑な明暗や色彩の違いが明らかに見て取れる(エリシウム大陸は明らかに黄色く、砂嵐でも発生しているのだろうか?)。海と呼ばれる青黒い模様も、大シルチスの付け根などよく見るとまだら(クレーターだったりする)に明暗が刻まれている。H.S.Tのカラー映像を彷彿とさせる見え方と言ったら言い過ぎであろうか?

いままで経験したことのないイメージに興奮し、スケッチを残さなかったことを後悔している(昔、惑星観測をやっていたのに…)。

テレビュー・ジャパン 天津 博(Hiroshi Amatsu,TeleVue Japan)


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