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コロナドHαフィルターの原理


コロナドフィルターシステム

● コロナドフィルターの構造

コロナドαフィルターのメインフィルターはエアースペース・エタロンタイプです。このタイプはフィルター基盤に無膨張素材を使うことができるため、温度的にきわめて安定しています。その反面、入射光束の角度制限が厳しく、収束光束中に挿入するのは現実的ではありません。そのため、ASP-60、AS1-90は対物レンズの前方に設置し太陽の視直径による±0.25°の偏角で入射させ、Helios 1では発散系を挿入することで主光線をコリメートしてメインフィルターに入射させています。メインフィルターの後方に挿入するブロッキングフィルターとのコンビネーションで、メインフィルターの副透過波長を完全にカットし、Hαラインのみ透過できるようになります。メインフィルターは完全にリジットな状態で固定されているため、視野全面が均一なHαラインになるメリットがあります。

● エタロンとは?

構造的には、2面の高反射フィルターを向きあわせに配したものです。これを一般的に「エタロン」と呼び、その原理はファブリ・ペロー干渉計です。
エタロンの中を白色光の平行光線が通過しようとしてもそのほとんどがコーティング面により反射されますが、2つのコーティング面の間隔を任意の入射光波長の1/2の整数倍にすれば、特定波長域の光線はエタロンを完全に透過します。コロナドフィルターはHα線のみを効果的に透過するよう設計されています。エタロンの透過波長幅が可能な限り狭く、付属の「ブロッキングフィルター」によって副次的透過波長を完全にカットすれば、Hα線だけを透過するエタロンシステムが実現します。
エタロンは、実現できうる精度の限界が要求される光学構造です。必要な波長だけを透過し、高い透過率を実現するためには、フィルターの平行精度(平面精度)を1/100波長(λ/100)より高めなければなりません。物理的にはパーフェクトな平面に比較した誤差を0.0000002インチ未満に抑えることが必要なのです。

* 工場で組み立てを待つ
エタロン基盤(映っているのは背後のネット)


上は、超狭域Hαフィルターの透過帯域を表したグラフです。グラフでは副透過波長域を伴うエタロンからHα線のピークだけを取り出すブロッキングフィルターの役割がよく判ると思います。
エネルギー遮断フィルター(E.R.F)は、エタロンに入射する波長域を制限し、望遠鏡内部が必要以上に高温になるのを防ぐ効果を第一に、ブロッキングフィルターの短・長波長域のリークをカットする働きも併せて持っています。3000nmに至る領域までの赤外カットの役割もあり、これは特に安全面からの配慮です。


● 入射光線の角度への配慮

超狭域干渉フィルターの使い方を理解するには、光学系を通過する入射角がフィルターの性能に与える影響を理解することが重要です。一般的なソーラーフィルターで使用される非常に狭い透過帯域では、どのフィルターも入射角の影響を大きく受けることになります。
入射角の影響については、以下の2点を配慮する必要があります。その一つは、地球で観測する限り太陽の平行光束には約0.5°の誤差が生じます。したがって、フィルターへの入射角域は±0.25°になります。太陽面全体を観測する場合、フィルターはその特性を損なうことなくこの入射角域に対応しなければなりません。
次に、フィルターを装着する光学系の収束光束の角度に配慮することが必要です。この光束は光学系のF値によって定義され、光学系の実効焦点距離をその有効口径で割ることで求められます。
エタロンを構成するにエレメントよって、フィルターに入射する光線の角度制限が異なります。屈折率の高いエレメントほど入射角度の影響が少なくなります。ASP-60のようなエアスペース構造(空気=屈折率1=低屈折率)を採用したエタロンは入射偏角に対するフィルター特性の変化が敏感なため、対物レンズの前方に配置するよう設計されています。もちろん、ソリッド構造のエタロンも対物レンズの前方に配置すると(数値的には)素晴らしい性能を発揮します。
一方、フィルターを接眼側に組み込むと話しは複雑になります。F値と実視界のバランスについて注意しなければなりません。たとえば、ネイティブでF45というような大きなF値を持つ天体望遠鏡は(ほとんど)ありません。したがって、バーローレンズを使ってF値を伸ばすか、必要に応じて絞りを併用しフィルターの許容値(たとえばF45)にしなければなりません。ただし、このようにF値を大きくすると像の倍率が上がります。視野が狭くなってもよければ別ですが、角倍率が大きくなりすぎると観測に制限が加わることも事実です。
以上の条件がすべて考慮されていることを前提に、それぞれの光学系に適合するフィルターの形式を選択します。

● コーティングのクォリティー

これはファブリ・ペローのなかで最も重要な構成要素のひとつです。コート層による吸収や、散乱損失がごくわずかでもエタロンの性能に多大な影響を及ぼすことになります。通常の手法(例えば真空蒸着)で施されたコーティング材では、コートの厚みに比例して表面の粗さが大きくなってしまいます。ただし、ソリッド・エタロンの場合、コーティング間のキャビティーはエタロン基盤と直接接しているので問題になりません。ところが、エアースペース・エタロンの場合、コート面の粗さは、重大な性能劣化に直結します。また、ソリッド・エタロンの場合、2面のコーティング間の位相分散が大きな性能劣化をもたらします。位相分散により、エタロン面の実効フィネスが変わり、コーティング間の残留透過損失が生じてしまいます。その原因の多くは、それぞれの面へのコーティングの際、コーティング・ガンが同一でないため、コーティング自体にわずかな相違が生じるからである。
コロナド社では、エタロンがすべての分野で実現しうる最高の性能を発揮できるよう独自のコーティング技術を開発しています。厳密に制御されたコーティング環境で、超ハード、高密度、科学量論的コーティング材を施すことができます。表面における面組織変化はまったく測定不能です。これにより、損失、吸収、散乱の発生が極めてわずかになります。この技術はもともとNASAのSDIプロジェクトのために開発されたもので、コーティング材と、その組織のレーザーダメージに対するしきい値は極めて高くなっています。同技術を採用した結果、エアースペース・エタロンで要求される厳しい条件下でも、2面のコートを同時に施すことにより、位相分散が事実上皆無になり、ソリッド・エタロンと同じ特性を実現できるのです。


● Hα単色光で見る太陽

投影法などによる白色光観察では黒点が唯一目立つ模様ですが、Hα単色光による観察ではぜんぜん目立たなくなってしまいます。
コロナドフィルターを望遠鏡に装着して観察すると、まず目に飛び込んでくるのは太陽の縁から飛び出している「プロミネンス」です。これは毎日必ず見ることができ、下の写真に示すようにその形はさまざまです(成因によって形がさまざま)。もちろん、数分間で地球規模とは比較できない劇的な変化を示すプロミネンスもあり、「サージ・プロミネンス」と一般に言われています(下写真、一番左のプロミネンスが該当します)。はなはだしいものでは、ほんの1時間で太陽直径に匹敵する高さまで噴出した例があります。
次いで目に入るのは「彩層面(白色光で見える光球面から6000kmほど上層に拡がる層。地球でいう大気圏に相当?)」の黒いスジ状の模様「ダークフィラメント」と、彩層面の明るい「活動領域」と呼ばれる部分です。ダークフィラメントは彩層面を背景にしたプロミネンスです。縁に近いダークフィラメントをよく観察すると、その一部が縁に掛かりプロミネンスとして輝いて見えることがあり、見応えがあります。活動領域は、黒点周辺の磁気活動に由来するものと考えられています。主に「プラージュ(彩層白斑)」が発達し、領域全体が明るく見えます。ダークフィラメントやプラージュは非常に広範囲にわたる現象で、そのスケールに比べると黒点は単なる小さなシミに過ぎません。
白色光による観察では想像もつかない彩層面のダイナミックな景色の中で、ひときわ強烈な印象を与える現象が「フレア」です。これは太陽活動の盛期に比較的高い頻度で発生する現象ですが、常に観察できるものではありません。フレアはたいていプラージュの領域で発生します。明るいプラージュの中(近傍)にあって、フレアは、光り輝いて見えます。また、その活動は刹那的でほんの数分から数十分の現象です。その活動によって放出されるエネルギは莫大で、地球上の私たちにも影響を与えるほどです(下段の文章を参照)。
コロナドHαフィルターを使うことで、目の前にある恒星「太陽」の生きている姿をリアルタイムで観察できます。弊社ショールームで手に汗握る「Hα体験」をしてみませんか!


コロナドフィルターで見える太陽の姿


私たちすべてにふりそそぐ光と熱の源「太陽」。直径は約140万キロで地球の約109倍、表面は絶対温度5800K。重力によって強く圧縮された中心部は高温・高密度であり、4個の水素原子核が1個のヘリウム原子核にかわる核融合がおきています。毎日大量の水素がヘリウムにかわっても、あと50億年以上は現在のまま水素燃焼段階の星で輝きつづけます。約46億年前に誕生した太陽は、今、壮年期をむかえているといえます。
太陽活動は、何百年、何千年というタイムスケールで地球の気候を支配してきただけではありません。ほんの数分で発生する素粒子や放射線の急激な増幅により、通信障害や極地のオーロラが発生し、人工衛星のエレクトロニクス素子に異常を引きおこし、宇宙飛行士の健康をおびやかします。今後、太陽の活動をリアルタイムでチェックする意義が増すゆえんです。これは「宇宙天気予報」と呼ばれ、すでに地球の内外で観測が始まっています。宇宙からは観測衛星が詳細な太陽活動をとらえ、地上の天文施設はHα線で太陽の表面構造を調べています。プロミネンス、フレア、黒点、ダークフィラメントなどはHαの代表的な観測対象です。
「より多くのひとにHα観測を体験してもらいたい」というコンセプトで開発されたコロナド社Hαフィルター。短時間に変貌する太陽の顔を手に取るように観察できます。

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